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印刷のあらまし

1.印刷の基本概念

「印刷」は、広義として印刷物を制作するための工程全般の総称をいう。狭義には原稿の情報を紙などの上に転移させて、多数複製する工程のみを指す。

1) 印刷物制作方法

印刷物の基本的な制作方法は以下のとおり。

  1. 印刷物の種類やデザイン等のルールを決定する「企画・編集デザイン」
  2. 各種原稿を加工し最終的に印刷版を作る「プリプレス」(DTP、校正、刷版等)
  3. 印刷版にインキを付けて印刷版の情報を被印刷体(用紙等)に転写していく「プレス」(印刷)
  4. 印刷された用紙を印刷物の形態に仕上げる「ポストプレス」(製本加工)

2) 印刷の役割

主に紙媒体による情報伝達手段として、より早く、より多く、より正確に情報を伝えてきた。インターネットに代表される紙以外の情報伝達手段も増えているが、まだまだ印刷の果たす役割は大きい。

2.印刷小史

POD(デジタル印刷)、電子書籍

1) 活版印刷

  1. 1445年、ドイツのグーテンベルクによって発明される。 大量印刷のさきがけとなった。
  2. 鉛の活字を1文字づつ組んで刷版をつくり、印刷版に塗布したインキを直接用紙に印刷する直接印刷。
    印刷精度が鮮明で、文字中心の印刷物に適した。
    印刷版が活字で組んであることから活版印刷、印刷版の形状が側面から見た場合、凸面であることから、凸版印刷とも言われた。
  3. 写真植字機とこれにリンクした平版印刷機の出現により、活版印刷は徐々に衰退。
    1980年代までは文字主体の印刷に根強い需要があったが、1990年代には古文書等の特殊な分野に限られ、現在は希少な存在となった。

2) 写真植字機とオフセット印刷

  1. 1920年、わが国独自の和文タイプライターと写真の引き伸ばし機能を合わせ、文字盤に光を透過させ光の文字像を印画紙やフィルムに投影し、1文字づつ移動しながら原版をつくる写真植字機が出現。日本より世界に広がった。
  2. 原版はレイアウトによって台紙に貼りこまれ、印刷版をつくる最初の作業であるため版下と言われた。活版印刷のように原版を直接印刷機に取りつけることをせず、製版カメラでフィルム撮りをし、さらにPS版という感光層を塗布したアルミ板にフィルムを焼き付け、刷版をつくった。
    印刷は、刷版(PS版)に塗布したインキを一旦ゴムブランケットに転写し、用紙に再転写するもので、オフセット(offset)印刷と言われ、刷版が平坦なことから平版印刷とも言う。
  3. 活版がホットメタルと言われるのに対し、写真植字はコールドメタルと言われた。
    活版印刷に比較し一長一短はあるが、納期(早い)、多様性(文字、画像)、汎用性(品質、数量)、合理性(滞版)等全般に優れ、1950年代から多くの印刷会社がコールドタイプ化し、印刷手法の主流となった。
  4. 1980年代にはいり、写真植字による組版は電算導入へと進んで行く。

3) 軽 印 刷

  1. 戦後の経済復興下で、迅速かつ廉価な情報手段として、手軽にできる印刷が出現。
    蝋を塗布した原紙に鉄筆やタイプライターで文字を打ち、原紙を刷版として直接謄写印刷機で印刷する。刷版の表面にインキを塗布し、文字を打ち込んだ部分からインキが裏面に染み込み、用紙に印刷されるため、孔版印刷とも言われた。
  2. 1970年代、高度経済成長とともに品質向上が要求され、オフセット印刷機が導入された。活版から移行したオフセット印刷とは品質面、価格面で一線を画し、軽印刷でのオフセット印刷との位置付けから軽オフと言われた。
  3. 軽オフは、タイプライターで印字(清打ち)した原版を版下に、写真植字で印字した版下同様、製版カメラでフィルム撮りし、小版のPS版に焼付け、小型平版印刷機で印刷したため、PTO(Photo Type Offset)印刷と言われた。
  4. 1980年代、組版はタイプライターから写真植字機に移行し、軽オフとオフセット印刷の区別はなくなった。
    さらに写真植字機による組版は電算導入へと進んでいく。

4) 組版の電算化

  1. 1980年代、コンピュータを使い組版を行うシステムが普及した。
  2. 文字データと割り付けデータを各々コンピュータに入力して組版処理を行う方式で、電算写植が出現した。従来の活版または写真植字に変るもので、CTS(Computerized Typing System)と言われた。
    電算写植は、大量のデータを規則的に行う組版には威力を発揮した。
  3. ワードプロセッサで入力した文字をコンピュータによって印刷書体に変換・出力する方式で電子組版が出現した。電算写植に比べ、機種が廉価で、取扱いが簡便なため、軽印刷の分野で普及した。
    発注者がフロッピーディスクでデータを提供するという、従来とは異なった取引形態が生まれた。

5) DTPの出現

  1. 1985年、アップル社により、パソコンで@デザイン・編集、A版下、B製版の一連の作業を行うシステム、DTP(Desk Top Publishing)が出現した。
    利便性、価格面など、従来の組版システムを多くの面で凌駕し、急速に世界中に普及した。このため、旧来のアナログ方式はが激減した。
  2. DTPの印刷物制作上の成果品はフィルム(DTP出現当時)であるが、機能がデジタルであるため、CD−R、Webはじめ、多種多様な成果品を生むことができる。
  3. 印刷にとって、DTPの出現はグーテンベルク以来の大きな改革。

6) CTPによるプリプレスのデジタルワークフロー化

  1. CTPはComputer To Plateの略。
    1995年にドイツで開催された印刷機材展「DRUPA」で実用化を目指して発表された刷版工程のデジタル化技術で、2000年以降、日本の印刷業界に普及し、現在は刷数の主流となっている。
  2. DTPデータをRIP処理した印刷用データから、直接、印刷版となる刷版を作成することが可能。
  3. 従来の刷版(PS版)と比較し、PS版作成に必要なフィルムの出力が不要であるため、制作工程の短縮とコスト削減のメリットがある。
  4. DTPの普及に続きCTPが出現したことで、印刷データから印刷版の作成まで、プリプレスのデシタルワークフローが確立した。
    これに伴い、色校正についてもDDCP(Direct Digital Color Proofing)によるデジタル色校正の技術が普及した。

7) デジタル印刷(POD)、電子書籍

  1. PODはPrint On Demandの略。
    「必要な時に必要なだけ」というニーズ対応したデジタルプリント技術。
    オフセット印刷と異なり、データから直接印刷(出力)するため、印刷版が不要となる。また、1枚ごとに異なる情報を印刷することが可能(バリアブル印刷)。
    主に印刷業向けのデジタル印刷は1990年代前半に登場し、近年、その普及スピードは加速している。
  2. 電子書籍は、印刷物そのものをデジタル化することだといえる。
    さまざまな端末やフォーマットの規格がある、紙の本に比べてコンテンツ数が少ない。出版や頒布に絡む権利問題といった数々の課題があるものの、今後の成長市場として期待されている。

3.印刷産業

1) 印刷産業の規模

  1. 経済産業省の工業統計における産業分類では、印刷・同関連業は、@印刷業 A製版業 B製本業 C印刷物加工業 D印刷関連サービス業で構成される。
    印刷物の制作は、版の制作(プリプレス)→印刷(プレス)→製本(ポストプレス)の工程をたどる。これら全工程を一企業で一貫して行う場合もあるが、ほとんどは工程の一部を分担する外注型産業である。
  2. 平成26年における従業員数別、事業所数は下表のとおり。
    従業員数 事務所数(件) 構成比(%) 従業員数 事務所数(件) 構成比(%)
    3人以下 14,179 54.9 100〜199人 283 1.1
    4〜9人 5,730 22.2 200〜299人 53 0.2
    10〜19人 2,732 10.6 300〜499人 40 0.2
    20〜29人 1,229 4.8 500〜999人 14 0.1
    30〜49人 866 3.4 1000人以上 7 0.0
    50〜99人 710 2.7 合  計 25,843 100.0
    注)経済産業省 平成26年工業統計表「産業編」より経済調査会が作成
  3. 事業所数、従業員数、出荷額、過去10年の推移。
    西暦 平成 事業所数 2004=100 従業員数 2004=100 出荷額 2004=100
    2004 16 33,789 100.0 379,820 100.0 7,211,904 100.0
    2005 17 31,970 94.6 370,699 97.6 7,120,178 98.7
    2006 18 32,683 96.7 363,991 95.8 7,010,825 97.2
    2007 19 32,811 97.1 369,596 97.3 7,141,740 99.0
    2008 20 29,684 87.9 353,906 93.2 6,903,690 95.7
    2009 21 30,318 89.7 341,040 89.8 6,320,514 87.6
    2010 22 29,179 86.4 330,772 87.1 6,176,116 85.6
    2011 23 26,145 77.4 311,383 82.0 5,708,650 79.2
    2012 24 28,247 83.6 312,592 82.3 5,616,959 77.9
    2013 25 27,026 80.0 306,833 80.8 5,545,035 76.9
    2014 26 25,843 76.5 297,776 78.4 5,536,486 76.8
    注)経済産業省 平成26年工業統計表「産業編」より経済調査会が作成
    注)単位は、事業所数:件 従業員数:人 出荷額:百万円

2) 印刷産業の組織

  1. 印刷団体は、印刷手法、印刷目的、企業規模、専門性等により各々組織され、各々活動していたが、昭和60(1985)年、印刷物制作という共通の目的のもと、印刷10団体を束ねた(社)日本印刷産業連合会が誕生した。組織は下図のとおり。
    日本印刷産業連合会

3) 印刷・同関連事業所の地域分布

  1. 事業所の地域分布は下表のとおり。
    北海道 東北
    (6県)
    関東
    (7都県)
      中部
    (5県)
     
    東京都 他6県 愛知県 他4県
    766 1,425 9,743 5,536 4,207 3,406 1,574 1,832
    3.0% 5.5% 37.7% 13.2%
    甲信越
    (5県)
    関西
    (6府県)
      中国
    (5県)
    四国
    (4県)
    九州
    (8県)
    合計
    大阪府 他5府県
    1,757 4,988 2,945 2,043 1,115 654 1,989 25,843
    6.8% 19.3% 4.3% 2.5% 7.7% 100.0%
    注)経済産業省 平成26年工業統計表「産業編」より経済調査会が作成

4.印刷方式の分類

1) 平版印刷(オフセット印刷)

平版印刷(オフセット印刷)
  1. 版を側面からみると平坦になっている。
  2. 水と油が合い入れない原理を利用、版の親油性の部分に塗布したインキが一旦ゴムブランケットに転写、さらに用紙に間接印刷する。
  3. 印刷機は平版印刷機を使用。間接印刷のため、オフセット(offset)印刷とも言う。
  4. 印刷版はDTPデータからCTPで直接出力するのが一般的。少量印刷の場合は版下(DTP出力した印画紙)から静電法または銀塩法により直接紙版に焼き付けることもある。これをダイレクト製版と言う。
  5. 品質、数量、費用、納期の面とも対応が柔軟なこと、写真、図版等の画像印刷が容易であること、印刷用データを保存し、再版が容易なことから、現在の印刷手法の主役となっている。

2) 凸版印刷(活版印刷)

凸版印刷(活版印刷)
  1. 版を側面からみると凸状になっている。
  2. 版の凸の部分にインキを塗布し、用紙に直接印刷する。
  3. 活字を組んだ版で印刷することから活版印刷とも言う。グーテンベルク以来長いこと印刷の主役であったが、現在はその役割を平版印刷に渡した。
  4. 写真や図版は、原版フィルムを銅または亜鉛版に焼き付けて「写真凸版」をつくり、活字組版に組み込む。
  5. 印刷機は凸版印刷機を使用。活字組版での印刷は版面が磨耗するため、大量印刷の場合、活字組版から母型(紙型)をとり、そこに鉛を流し込んで複製版をつくり、印刷する。

3) 凹版印刷(グラビア印刷)

凹版印刷(グラビア印刷)
  1. 版を側面からみると凹状になっている。
  2. 版の凹んだ部分にインキを塗布し、用紙に直接印刷する。
  3. 版を刻むことからグラビア(gravure:ラテン語)印刷とも言う。
  4. インキの付着量が多く、材質を選ばず高品質の大量印刷が可能。かつては雑誌の写真の部分に最適であったが、現在は紙幣や包装用のフィルムシートへの印刷が中心。
  5. 印刷機は凹版印刷機で、製版コストが割高なため大量印刷向き。

4) 孔版印刷(謄写印刷)

孔版印刷(謄写印刷)
  1. 版を側面からみると孔状になっている。
  2. 版の表面に塗布したインキが版の孔を通して裏面に浸透し、用紙に直接印刷する。
  3. 軽印刷分野において、原稿を書き写していたことから謄写印刷とも言う。
  4. シルクスクリーン印刷も孔版印刷と同様の手法であるが、工芸的な高級印刷物の制作となる。
  5. 印刷機は軽印刷分野においては孔版印刷機、シルクスクリーンにおいてはスクリーン印刷機を使用する。いずれも少量印刷向き。

5) デジタル印刷(POD)

デジタル印刷(POD)
  1. データから直接印刷(出力)する。
  2. 版は存在しないが、敢えて言えばデータそのもの。
  3. 1枚ごとに異なる情報を印刷することが可能(バリアブル印刷)。