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クリエイティブワーク

1.クリエイティブワークとは

 印刷物やインターネットを含めた情報伝達媒体である各種メディアは、当然ながら目的があって制作されるものであるが、情報伝達手段のデジタル化によりメディアの効果測定が容易になったため、これまで以上に、目的に対するメディアの効果が重視されている。
 このため、メディアの制作においては、発注者・受注者がコミュニケーションを取りながら、メディア活用の目的を共有したうえで、作業プロセスを進めていくことが重要になる。
 本誌では、メディアの制作に先立ち必要となる、目的の共有や方向性の策定、表現方法の決定などの作業プロセス全体を「クリエイティブワーク」と呼び、広報活動などにおける「課題解決のためのコミュニケーション戦略活動」と位置付けている。

■ クリエイティブワークとは、情報を的確に印象よく伝えるための戦略活動である

 情報伝達手段が多様化し、手軽に情報を発信・入手することが可能になった現在、自らが発信する情報への共感や理解を得るためには、適切な表現を行うための戦略や技術が必要となる。
 クリエイティブワークは、さまざまなメディアを通じて、発注者(情報の発信者)が、伝えたい相手に対し伝えたい思いを正確にスムーズに伝え、共感や理解を得るための効果的な戦略活動である。

■ クリエイティブワークは、専門職の直感やセンスのみに依存するものではない

 クリエイティブワークは、「デザイン」という言葉に包括されることもあり、デザイナーやコピーライターなどの専門職の直感やセンスのみに依存するものと思われがちである。
 しかし、クリエイティブワークは、課題解決に向けてさまざまなメディアを活用するための戦略活動であるため、複数のプロセスから構成されている。それらの活動を明確に定義することは、専門職と発注者をつなぐ共通言語としての機能を果たすものだといえる。
 このため、クリエイティブワークの作業の流れと内容を理解することで、センスや直感のみに頼らず、適切なプロセスを踏みながらロジカルに戦略を練ることが可能となる。

■ 質の高い情報伝達の実現には、発注者のクリエイティブワークへの理解が必要である

 メディアを活用し、質の高い情報伝達を実現するためには、受注者となる専門職の知識や経験を活かしてクリエイティブワークを進めることだけでなく、発注者のクリエイティブワークへの理解度が高いことも重要な要件となる。
 発注者・受注者の双方がクリエイティブワークへの共通認識のもと、情報を共有して作業を進めることが、企画・制作段階でのトラブルを防止し、メディアの効果的な活用につながる。

クリエイティブワークの基本アプローチ(例)

効果的なメディアを制作するためのクリエイティブワークでは、全体計画と情報共有が不可欠となる。 相互の認識のズレを防ぐためにも、事前準備として、まずは以下の図に示したポイントについて、受発注者間で情報が共有されているか確認しておく必要がある。

印刷物の受発注の流れ

2.「印刷料金」に掲載されていたケーススタディ(第1話)

「印刷料金」の2018年版および2019年版に掲載したケーススタディ(第1話)の内容は以下のとおり。

■「印刷料金」掲載のクリエイティブワークについて

「印刷料金」には、下記のケーススタディ(第1話)の要約版の他に、クリエイティブワークのワークフロー、ケーススタディ(第2話)、クリエイティブワークの受発注に必要なオリエンテーション、クリエイティブワークの積算の考え方、クリエイティブワークの見積例、が掲載されています。

メディアの制作に先立ち、必要な準備や情報整理など、クリエイティブワークに関する要点をケーススタディで解説する。

登場人物

  • 新田 沙知(にった さち)

    仮野市役所の観光推進課へ配属となった新人公務員。もとより郷土愛が強く、天職に就けたと思ったが 観光推進課の仕事は、覚えるのもひと苦労。
    ここでは観光パンフレット企画制作のリーダーに任命され大久保課長とアートディレクター・作田の指導の元、 一連のプロセスを懸命に学び、実践していく。

  • 大久保 太朗

    大久保 太朗(おおくぼ たろう)

    仮野市観光推進課課長。
    長年の実績を高く評価され、先年、観光推進課課長に抜擢された。
    新人とはいえ、ユニークなアイデアと表現力を持つ新田 沙知に豊かな才能を見いだし、アートディレクター・作田 政樹の力を借りて沙知のさらなる成長に力を注いでいる。

  • 作田 政樹(さくた まさき)

    フリーランスのアートディレクターであり大久保課長の甥っ子でもある。
    クリエイティブワークの最前線で追求してきたノウハウによる社会貢献を志し、伯父である大久保課長のもとへ出向き、仮野市役所で作るメディアのアドバイザーをボランティアで行っている。

効果的なメディアを企画・制作するためには、
クリエイティブワークが重要になる。

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クリエイティブワークの目的や認識を受発注者間で共有するために、事前の情報整理が大切になる。

チェックポイント

1リニューアル Renewal

メディア制作の現場では、改訂や増刷を含め、複数の意味で使用される。
何をどう変えるために、どういったコミュニケーションを図ろうとするのかを考えながら、すでにあるメディアで使ってきた原稿を構成要素として再使用するのか、あらゆる掲載情報を全て再収集し、ゼロから作り直すのか、制作手法によってその作業量は大幅に変わる。

2アートディレクター Art Directorgj

広告や販売促進用ツールの企画・制作現場において、主に視覚表現の方向性を決定する役割を担う。
コピーディレクター(コピーライター)と連携し、チームワークを支えるデザイナーやカメラマン、イラストレーターなどを統括し、質の高い発想や技術を引きだす。

3原稿 げんこうhijk

一般に、観光案内を目的としたパンフレットなどは、文章(テキストデータ)だけでなく、その文章を分かりやすくするために、写真、イラスト、表組、グラフなども使用されるが、現場では、それらすべてを「原稿」として取り扱う。
原稿は独自に内製するだけでなく、精度や表現力を高める目的で専門職に依頼するケースもある。
また、表組やグラフに盛り込むデータには、専門機関の認証など客観的な裏付けが必要とされることもあり、出典の確認や、著作権などの法律への配慮も必要となる。
原稿の準備には、依頼や契約、進捗管理などを含め、手間のかかる作業でもあるので、スケジュールにゆとりを持つことが望ましい。

4メディア Median

広告、広報、販売促進など目的に合わせ企画・制作され配布される「情報伝達媒体」のこと。
パンフレット、カタログ、チラシ、店頭 POP、パッケージ、Web などの総称として使用される。また、コミュニケーションツールとも呼ばれる。

クリエイティブワークの目的や認識を受発注者間で共有するために、
事前の情報整理が大切になる。

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クリエイティブワークの目的や認識を受発注者間で共有するために、事前の情報整理が大切になる。

チェックポイント

5共有 きょうゆう

クリエイティブワークはチームワークが基本であるため、情報の共有が重要になる。
例えばスケジュールや予算に関する情報に加え、各種原稿を作成するための資料類、テキストデータや写真・動画、イラストなどの管理・運用情報などを共有することで、刻々と変化する状況に対し、互いの認識のズレや誤認により発生するトラブルを防止することが可能になる。
なお、情報共有のためのツールとして、発注者が作成するオリエンテーションシート、受注者が作成する企画提案書、最終的な業務内容を示す仕様書などがある。

6目的 もくてきab

情報の発信者にとってメディアを作ることは「手段」を講じることであって、「目的」ではない。観光パンフレットであれば、それを読んでもらうことで、どれだけ読者に我が街の観光資源を知ってもらい、好感をもって記憶され、来訪を実現することが目的である。
さまざまな手段を講じる作業の中にあっても、本来の「目的」を常に意識しておく必要がある。

7ターゲット Targetc

情報を伝えたい相手を指す。
プロジェクトが狙うターゲットの性別、年齢、世代、嗜好などを踏まえ、相手にふさわしい情報選択と表現手法を適用することが、訴求効果の向上や、ムダな作業の抑制につながっていく。例えば、観光パンフレットなどでは、ターゲットに海外からの来訪者が加わるケースも多いため、複数言語でのコミュニケーションをカバーする必要が生じる。この場合、文字原稿を作るには「翻訳」が必要となるため、何種類の言語で情報を掲載するのか、メディアは言語ごとに制作するのかの判断などに加えて、言語ごとの校正も必要になる。
情報の発信にあたっては、どんなターゲットと、どのような関係を築きたいのかをしっかりと思い描き、狙いを定めておくことが重要になる。

8プライオリティ Priorityfg

伝えたいことがたくさんあったとしても、それが相手にとって聞きたいこと、知りたいこととは限らない。
このため、提供情報には優先順位を付けた適切な編集と取捨選択が必要になる。
クリエイティブワークの現場では、メディア上でも現実の世界同様に TPO(時、場所、場合)を意識し、「トーン&マナー」という手法で、制作物の品質を検証・評価し、発信側の「らしさ」を兼ね備えたメッセージを心掛ける。

9差別化 さべつかhijk

他のツールとの類似性を喚起せぬよう注意し、差別化を意識して独自性を追求し「他との違い」をアピールすることで、メディアの効果は高まる。
一方で、昨今はSNSなどで「炎上」したり、サイバー攻撃にさらされるといったリスクもあるので、読ませ方や見せ方などの表現方法には、細心の注意が必要である。

入念な準備が、クリエイティブワークのプロセスをスムーズにし、
効果的なメディア完成へと導く。

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入念な準備が、クリエイティブワークのプロセスをスムーズにし、効果的なメディア完成へと導く。

チェックポイント

10専門業者 せんもんぎょうしゃ

印刷会社や広告代理店、広告制作会社は、クリエイティブワークの依頼先として代表的な業者である。
ただ、それぞれ業態が異なるため、プロジェクトの条件や制約に合致した業者選定がカギになる。依頼内容や方針がある程度まとまったタイミングで、まずは専門業者へ相談し、提案書や見積書作成を依頼し、比較検討することが望ましい。

11専門職 せんもんしょくak

クリエイティブワークには、それぞれの領域で職能を発揮する専門職が存在する。
以下はその一例であり、業種、業態、規模や地域性などにより、複数の担当領域を兼務するケースも多く見られる。

プロデューサー クリエイティブワーク全体の予算管理、スタッフのキャスティングなど、企画から完成までを統括・指揮し、成否についての責務を担う。
クリエイティブディレクター 文章表現・視覚表現など表現全体の方向性を策定し、現場での監督・指揮を担当する。
コピーディレクター 文章表現の方向性を策定し、コピーライティング現場での監督・指揮を担当する。
アートディレクター 視覚表現の方向性を策定し、デザイン現場での監督・指揮を担当する。
エディター(編集者) コピーライティング、デザインといった具体化作業へと進む前に、メディアの目的に応じて情報材料を収集し、取捨選択、組み合わせ、調整を図り、ボリュームやページ展開を最適化する。
コピーライター コピーディレクターの指示に基づき、文章表現の具体化(コピーライティング)を進める。ディレクターやデザイナーとの協業で、独自性や方向性(コンセプト)が的確に伝わるよう言葉や文章に具体化していく作業も担っている。
デザイナー アートディレクターの指示に基づき、タイポグラフィ(図版や画像を含む版面・画面における文字組の最適化)や、レイアウト、カラーリングなどの作業を進め、ツールの視覚化を推進していく。
カメラマン(フォトグラファー) 人物、物品、現場(状況)などの静止画や動画の撮影を行い、写真技術から好ましいイメージを喚起していく。
イラストレーター 絵画や図の描画技術により、ツールに掲載された手順、構造、考え方、状態などをより分かりやすくすること、好印象を喚起していく。
さまざまな作風があり、コンピュータグラフィックスやマンガなど表現技法は多様化している。

12責任 せきにん

完成したメディアだけでなく、専門職によって作成されたコピーや写真、イラストなどにも著作権が存在することを考慮し、権利関連の契約や疑義が生じた場合の対応について、事前に当事者間や専門家、法務取扱部署などに確認しておくことが望ましい。
また、問い合わせ先を準備し、メディアには必ず連絡方法を記載するなど、発信主体としての責任を持ち、個人情報や肖像権、公序良俗に反しない適正な配付・運用が必要となる。